画像診断×AI×社会貢献 =Well-being
健康長寿社会を、
最先端技術で支える
はじめに
私たちは今、「人生100年時代」を迎えようとしています。
日本人の平均寿命はこの10年から20年で大きく伸び、人々の健康意識の向上、食生活の改善、そして運動習慣の普及とともに、何よりも「医学の進歩」が重要な役割を果たしています。
私自身、20年以上臨床医としての経験を積む中で、この平均寿命の伸びを実感してきました。かつて「不治の病」とされていた病気が、今では多くの患者が救われるようになっています。医学の進歩は驚くべきものであり、その急速な変化を日々目の当たりにしています。
これからの時代、さらに医学が発展し、私たちが生きている間に「人生100年時代」が現実となるかもしれません。私たちの教室では、この延びた寿命をより豊かに過ごしていただくこと、すなわち「Well-being(より良く生きる)」の実現を目指しています。
Research主な研究内容
私たちの教室では、画像診断、AI(人工知能)、そして社会貢献を柱とした研究を行っています。
これらの分野が連携し合うことで、Well-beingを実現することを目指しています。
1可搬型MRIによる運動器検診
私たちは、筑波大学との共同研究により、通常のMRIを上肢に特化させることで超小型化(200kg)を実現し、それを車載することで、可搬型のMRI検診車を開発しました。これにより、スポーツ現場などで早期発見と治療介入が可能となり、例えば以下のような検診を行っています。
- 少年野球選手の「野球肘」検診
- ジュニアテニス選手の手首検診
- シニアテニスプレイヤーの手・肘検診
- 車椅子スポーツ選手の手・肘検診
これらは、画像診断技術を活用した社会貢献の一例です。
2MRI画像を活用したAIによる
診断アシストと予後予測
可搬型MRI検診車の導入により、多くの運動器検診を実施することが可能になりましたが、運動器画像を専門的に診断できる医師が限られているという課題があります。そこで、AIを用いた診断アシストシステムを開発し、運動器の画像に精通していない医師でも正確な診断ができるようにサポートしています。さらに、今後は予後予測を行うAIの開発も進めていく予定です。
3その他の研究
上記以外にも、当教室ではさまざまな画像診断に関連する研究に取り組んでいます。
- 早期子宮内膜症診断のためのAI開発
- DTI(拡散テンソル画像)を用いた骨格筋の微細構造評価
- オートプシーイメージングの応用研究
特に「オートプシーイメージング」では、従来の解剖による死因究明に比べ、非侵襲的かつ迅速に診断結果を提供できることから、法医学や臨床現場での応用が期待されています。具体的には、MRIやCTを駆使し、虚血性心疾患や急性冠症候群の病変を捉え、AIを組み合わせることで、より正確な死因分析を目指しています。
また、学生からの研究提案も積極的に取り入れ、柔軟に研究テーマを展開しています。
Education教育プログラム
私たちの教室では、画像診断、AI(人工知能)、そして社会貢献を柱とした研究を行っています。
これらの分野が連携し合うことで、Well-beingを実現することを目指しています。
プログラミング&画像診断勉強会
当研究室では、主にPythonを使用したプログラミング勉強会を定期的に開催しています。この勉強会では、AI技術を中心に、書籍やオンライン教材、動画を活用しながら学びを深めています。各自が学習した内容を持ち寄り、実践的なディスカッションを行うことで、技術の習得を支援します。
また医療画像AIを作成するには医学の知識、特に画像診断学の知識は必須のものとなります。関節や骨盤部などの正常画像解剖や、疾患の診断のレクチャーを行います。
論文抄読会
論文抄読会では、最新の研究論文を深く読み解き、議論を通じて多角的に分析します。先行研究の優れた点を吸収し、不足している部分や改善点を探り、自身の研究にどう応用できるかを考察します。このプロセスにより、研究者としての視野を広げ、研究成果の質を高めることを目指しています。
これらの学習活動は、「屋根瓦方式」と「チュートリアル方式」を柔軟に組み合わせた形式で行われており、参加者同士が互いに学び合い、成長できる環境が整っています。さらに、教員3名(髙屋、小林、岡本)が的確なアドバイスを提供し、東北大学病院の「医療AIセンター(AI Lab)」からも専門的なサポートを受けることが可能です。このような強力なバックアップ体制により、参加者は高度な知識と技術を効率よく習得することができます。
おわりに
私たちの研究を通して、スポーツを愛する少年少女、女性、シニア、そして車椅子ユーザーの方々が、より充実した日々を過ごせるよう、Well-beingの実現を目指しています。また、臨床および法医学の現場での社会的貢献を目指しています。これからも、QOL(生活の質)を向上させるための研究成果を発信し続けていきます。
Teacher
岡本 嘉一
Yoshikazu Okamoto
画像診断学分野 教授
画像診断学分野主任、東北大学医療AI人材育成拠点プログラム-Clinical AIのコーディネーターを務める岡本教授は、長崎県出身で、福岡大学での研修を経て、筑波大学でレジデント、助教、講師としてキャリアを積んできました。2024年5月より、当大学院の主任として、教育・研究に注力しています。
筑波大学時代には、臨床現場の最前線で最新の治療法や画像診断技術を駆使しながら、研究面ではスポーツ医学と画像診断の分野において専門的な知見を深めてきました。特に、少年野球やパラスポーツの分野でのパフォーマンス向上や障害予防に注力し、スポーツ医学における画像診断研究の第一人者として活躍しています。
また、「つくば少年少女スポーツ障害研究会(T-SKIP)」の代表として、若年層の安全で持続可能なスポーツ活動を啓蒙しています。さらに、「春日学園少年野球クラブ」の代表として、青少年の健全な育成と成長を支援し、次世代のスポーツ医学と青少年育成に貢献しています。また医療画像AIを作成するには医学の知識、特に画像診断学の知識は必須のものとなります。関節や骨盤部などの正常画像解剖や、疾患の診断のレクチャーを行います。
小林 智哉
Tomoya Kobayashi
画像診断学分野 助教
小林助教は千葉県出身で、筑波メディカルセンター病院において臨床経験を積みました。その後、茨城県立医療大学に着任し、診療放射線技師教育と研究に研鑽を積みました。2022年4月からは、現在の職に就き、教育と研究に力を注いでいます。
臨床現場においては、MRI撮像技術を専門とし、その高い技術をもってオートプシーイメージング(死亡時画像診断)の研究を続けてきました。現在もその研究を深化させ、国内外でオートプシーイメージング分野の第一人者として活躍しています。
また、小林助教は画像診断を用いた死因究明の重要性を強調し、その分野において社会貢献を続けています。東北大学医療AI人材育成拠点プログラム-Clinical AIのメンバーとしても、最先端のAI技術を駆使した新たな診断法の研究を推進しており、医療と技術の融合による次世代の診断技術の発展に寄与しています。
今後も、医療分野における画像診断技術の発展と教育の両面で、後進の指導に力を入れつつ、社会に広く貢献していくことを目指しています。
髙屋 英知
Eichi Takaya
東北大学病院医療AIセンター(AI Lab)助手
髙屋助手は東京都出身で、東京学芸大学教育学部、電気通信大学大学院情報理工学研究科、慶應義塾大学大学院理工学研究科を経て、2019年からは聖マリアンナ医科大学にて研究技術員として医療分野での経験を積み、2021年に東北大学病院 医療AIセンターに助手として着任しました。文理を問わない多様なバックグラウンドを活かしながら、医療AIの研究を通して大学院生の教育に注力しています。
髙屋助手は医療分野におけるAI技術の応用に力を入れており、特に少数データを用いた深層学習モデルの学習方法に強い関心があります。特に画像データの取り扱いに長けていますが、テキストデータや時系列データを含むマルチモーダルなデータを扱う技術も有しています。また、近年国内外で開発が進められている基盤モデルの活用も積極的に進めています。